上町病院と2020~
2020年1月、日本でコロナを最初に耳にしてから3年目に入った。来春5月にはそのコロナは2類から5類に分類され、インフルエンザと同じカテゴリーに入る予定だ。
手放しで喜べない程、振り返ると動乱と混乱の3年間であった。毎日のように、何台も救急車のサイレンがなり、毎日のように多くの方がコロナで亡くなっていった。上町病院は、コロナで受入れが困難な患者を多く受け入れていた。どこに運ばれたかと訊ねると大抵、上町病院で引き受けていた。上町病院の移転が決まっていても尚、その手、足を止めることなく上町病院のスタッフはフル稼働で対応してくれていた。上町にある地域医療を超えて、大病院がある離れたエリアからも運ばれてきた。
昨年の冬、第8波と言われた時期に市内の10代の子が、癲癇の発作で救急を必要とした。しかし、救急車に乗ってから一向に受入先が決まらない。なぜなら、コロナ陽性が判明し、受入れがより一層難しくなったのだ。やっと決まった病院は、横浜市内の病院であった。しかもインフルエンザも併発していた。保護者は底知れない心配に見舞われた。コロナが流行して以来、救急、病床、指定医療等々、生活の中の医療について葛藤や怒りや安堵、喪失と一言では言い表せない感情を多くの人が経験することになった。
大きく設備の整った病院が市内にあれば万全という考えは幻想に過ぎないことも分かった3年間であった。
26年春に開院予定を控えている小田原の市立病院は、県西部の三次救急医療機関として、救急救命センターと放射線装置、MRI、屋上にはドクターヘリで遠隔地からの搬送も可能な病院であり、近隣の住民にとっては身近に手厚い医療を受けられることを期待している。現在、外来と入院患者を含め、年間延べ約40万人が診療を受けるが、新病棟は5、6人部屋などを廃止し39室あった個室を80室に増設するので病床利用率は上昇すると言うが、個室が増えると言う事は患者の費用負担は増大し自費負担なしの健康保険だけで賄える一般病棟は実質減るのである。
病院は生命に関わる要である。いざ、救急を要する時、整備が整っていようが、建物が古かろうが、どこの救急病院でも医療へアクセスできなければ、取り返しのつかないことになる。だから総合的に考察すると上町病院の閉院に対しては慎重な考えに行き着くのである。国立病院から平成12年に地域の要請で市立病院になった。しかし、それを機に公務員であったスタッフは選択を迫られ、公設民営化となった上町病院の再就職は1/3まで減ってしまった。久里浜への移転は同じ市内であるが、また民営で主導する運用が始まる。市立病院といっても、運用は市では行わない。横須賀の実情に合った地域医療を実現できるのか、不安の方が大きい。しかしながら公設である。何か不具合が生じ変えていく余地があれば、議会を通して変更を求めていくことは可能だ。市民の発信は欠かせない。救急が必要な時に、保険で質の高い医療にアクセスできるよう生命に関わる地域の医療を主体的に考えていきたい。